データ分析の三賢人はデータのどこを見る? 『Googleアナリティクス実践講座』セミナーレポート

6月30日、『達人に学ぶGoogleアナリティクス実践講座』の刊行記念セミナーが開催されました。著者の小川卓さん、野口竜司さん、MarkeZine編集長・押久保剛、さらに日本では数少ないCAOとして活躍する清水誠さんが特別ゲストに。マーケティングとデータ分析の最前線に立つ面々が一堂に介したセミナーのレポートをお届けします。

Googleアナリティクス本出版記念!
【売上に貢献するデータ分析 特別セミナー】

去る6月30日(火)、翔泳社から刊行された『達人に学ぶGoogleアナリティクス実践講座』の刊行を記念した特別セミナーが開催されました。大好評をいただいている本書には書かれていないデータ分析のコツまで飛び出したセミナー、いったいどんな内容だったのでしょうか。

講師は著者の小川卓さん野口竜司さん。司会にMarkeZine編集長の押久保剛が立ち、最後のスペシャルトークでは清水誠さんをお迎えしました。データ分析のプロである3名が揃うという珍しい光景です。参加者は70名の定員いっぱいになり、泣く泣く抽選漏れした方もいらっしゃったそうです。

改善を実現するためのアクセス解析思考&分析法

最初の講演は小川卓さん。ウェブアナリストとしてマイクロソフトやリクルート、アマゾンジャパンなどで勤務され、いまも引く手数多で活躍されています。

小川さんが強調するのは、データを分析に落とし込み、改善へと繋げる「アクセス解析思考」を身につけること。サイト分析はセグメントの理解が重要とのことから、講演のメインテーマは「Googleアナリティクス×セグメント」となりました。セグメントとはデータを特定の条件で分割して、特徴を浮き立たせることです。

とあるページのPVに対しても、全体の数字だけを見るより、新規訪問とリピート訪問で分けてみることで、気づきが得られます。全体で5万PVあるページでも、新規訪問:リピート訪問が5:5や1:4では、まったく違う情報がそこにあるといえます。

セグメントと気づき

 では、Googleアナリティクスでセグメントをうまく利用するにはどうすればいいのか。小川さんはアドバンスセグメントの利用を勧めます。デフォルトのセグメントは「直帰セッション」や「参照トラフィック」「購入したユーザー」など全22種類。これらはユーザー属性、コンバージョン、集客、その他に分類することができます。

セグメント

 アクセス解析思考を身につけるには、任意でセグメントを作成できるカスタムセグメントの活用が不可欠です。ユーザー属性やテクノロジー、行動などでセグメントを分けることでより多くの気づきを得られることができ、そこからどうすればいいのかに繋げられるというわけです。

小川さんのおすすめカスタムセグメントをご紹介しましょう。それぞれ、小川さんからフィルタ設定のテンプレートをいただいておりますので、併記しています。ぜひご活用ください。

3ページ以上の閲覧 【テンプレートはこちら

これによって、サイト認知や活用に繋がっている訪問の割合を把握することができます。

東京以外からのアクセス 【テンプレートはこちら

このセグメントは、地域差の把握に利用することができます。例えば北海道や愛知、大阪で注目されている記事や商品などを知ることで、地域に対応した施策を講じられます。

TOP流入×新規 【テンプレートはこちら

サイトのTOPページが、新規訪問を招くのにどれほど効果的なのかを評価できます。A/Bテストへの転用も可能です。

3ワード以上の検索フレーズ 【テンプレートはこちら

検索ワードは多ければ多いほど、そのユーザーのニーズが深く表れていると考えることができます。「MarkeZine、Googleアナリティクス」よりも、「MarkeZine、Googleアナリティクス、初心者」のほうが、より詳しくニーズを把握できますね。

特定ランディングページからの遷移率 【テンプレートはこちら

ランディングページからほかのページヘどれくらい誘導できているのかを評価できます。

新規でページを見た人の再来訪 【テンプレートはこちら

それぞれのページがどれくらい再訪問されているかを評価することができます。

こうしたセグメントを見ることで、改善のヒントとなる「規則性」と「特異点」が分かるようになります。単にデータを見つめるのではなく、セグメントで分析することが大事だということです。

実際にどう改善すればいいのか?

しかし、小川さんが注意してほしいと考えるのは、データ分析から改善施策は生まれないということ。データはいいところと悪いところ、そして時系列の傾向を教えてくれるだけ。実際にどう改善すればいいのかは、利用者が考えなければなりません。

そのための方法として、小川さんは同業他社の事例や自社の成功事例を参考にするとよいといいます。他社のサイトやアプリにしても、なぜその施策を行なっているのか、なぜこのページ構成なのかといった背景を考えることが大事です。

また、いざ改善策が必要なときに事例を探すのではなく、普段から「いいな」と思ったページや画面、UIはスクリーンショットを撮影し、URLとともに保存しておくことが欠かせません。施策の効果測定のためのデータだけでなく、こうした一手間を積み重ねておくことが、アクセス解析思考――データを分析に落とし込み、改善へと繋げる力となって身についていくのです。

矢継ぎ早に繰り出された小川さんの講演でしたが、その内容はとても濃く、ぜひ本書『達人に学ぶGoogleアナリティクス実践講座』で味わっていただければと思います。

進化を続けるGoogleアナリティクス徹底解説

続いての講演は野口竜司さん。本セミナーの主催であるイー・エージェンシーのマーケティング・サービス開発担当取締役を務めていらっしゃいます。Googleアナリティクスの理解と活用に関しては、国内最高のスペシャリストです。

そこで、野口さんはアップデートが続くGoogleアナリティクスの「進化」を解説してくださいました。いま注目を浴びているユニバーサルアナリティクスの説明も含めた内容となりました。

Googleアナリティクス 4つの進化

デジタルマーケティングプラットフォームとしてのGoogleアナリティクスは、4つの進化を遂げています。その4つとは、ベースバージョンアップアドプラットフォームとしての進化ビッグデータ活用基盤としての進化アプリプラットフォームとしての進化です。

デジタルマーケティングプラットフォーム

ベースバージョンアップ

そもそもユニバーサルアナリティクスとは、Googleアナリティクスの新バージョンだということができます。野口さんいわく、ユニバーサルアナリティクスでしか使えない機能も増えており、早期に移行して損はない、とのこと。まだ移行していない方は、ぜひユニバーサルアナリティクスに変更しておきましょう。設定画面から確認できます。

更新点としては、カスタム変数がカスタムディメンションとなり、カスタム指標が追加されました。皆さん、指標とディメンションはきちんと理解できていますか? 本書でも、また本講演でも野口さんはこの2つをまず理解するのが大事だとおっしゃっています。指標はレポートで表示する数値、ディメンションはレポートの切り口や分析軸のことです。「(指標、例:ページビュー数)を(ディメンション、例:記事ページ)ごとに見たい」と覚えましょう。

カスタムディメンション
カスタム指標

 また、UIが変更され、eコマースの機能が大幅に拡張されたのが大きな特徴です。特にeコマースはユーザー軸での分析と商品軸での分析が強化、歩留まりが分かるようになりました。

アドプラットフォームとしての進化

広告配信のプラットフォームとしても、Googleアナリティクスは進化しました。AdWordsとGoogleアナリティクスセグメントを組み合わせることで、リマーケティングに活用することができます。

例えばGoogleアナリティクス上で「商品をカートに入れたが購入しなかったユーザー」のセグメントを作成すれば、このユーザーに対してリマーケティングできるというわけです。

AdWords

 また、会員情報(CRMデータ。個人情報を除く)をGoogleアナリティクスにインポートすることもでき、会員情報によって拡張されたGoogleアナリティクスのセグメントリストでリマーケティングの配信制御が可能です。普段Googleアナリティクスで計測できないデータからしか分からない「いいお客さん」かどうかといった観点をGoogleアナリティクスに組み込めるようになったのです。

ビッグデータ活用基盤としての進化

Googleアナリティクスを利用している企業では、これまで蓄積されてきた大量のデータ――ビッグデータがあるでしょう。有償版のプレミアムバージョンで、GoogleアナリティクスのデータをBigQueryにエクスポートできるようになりました。

それにより、例えばBigQueryを統計ソフトRで統計解析し、コンバージョンに近いユーザーをスコアリング。結果をBigQueryに反映し、Googleアナリティクスに再度インポートしてリマーケティングに活用するなどのことができるようになりました。これらはGoogleアナリティクスプレミアムでのみ提供されているサービスですが、より深くデータ分析・活用を行なうには欠かせない機能といえるでしょう。

BigQuery

 Googleアナリティクスにはさまざまな外部CRMデータをインポートすることができます。カスタム指標とカスタムディメンションを駆使し、適切なマーケティングに活用してみてください。

機械学習(スマートリスト)はコンバージョンに繋がる可能性の高いユーザーを自動的にリスト化してくれる機能です。また、Googleオーディエンスデータは属性別レポートを作成できるなど、各属性ユーザーに対しての詳細な分析やリマーケティングを行なうために必要になりますので、ぜひ設定をオンにしておきましょう。

アプリプラットフォームとしての進化

Googleアナリティクスはウェブサイトで利用されていますが、近年はアプリのデータ分析にも利用されています。Google Playだけでなく、iTunesもパラメーターを運用するなどすれば計測ができます。世界中でウェブサイトよりもアプリでの活用に重点が置かれつつある中で、アプリ計測の重要性が急速に増すことは容易に想像ができることでしょう。

アプリ計測

すばやく新機能を把握し、快適なデータドリブン環境を

野口さんは最後に、Googleアナリティクスプレミアムの先進的な活用事例を紹介してくださいました。CRMインポートデータとdoubleclickによるCRMリマーケティングの実践や、統計ソフトRを活用したBigQuery+リマーケティング配信、さらにTVCMとYoutubeの効果測定などが行なわれているそうです。

そして、「Googleアナリティクスの新機能をすばやく把握し、他社が利用し始める前に快適なデータドリブン環境を整えましょう」とまとめられました。機能が多く、最初はとっつきにくい感じのあるGoogleアナリティクスですが、1つずつ理解していくことで、応用の幅が広がっていきます。

本書でもそのことは強調されていますので、ぜひ基本的なところから勉強してみてください。機能について詳しく知りたい方は、『達人に学ぶGoogleアナリティクス実践講座』をどうぞ。

清水さんを交えて、質疑応答スペシャルトーク

刊行記念セミナーの最後を締めくくるのはスペシャルトーク……と思いきや、急遽、受講者の方からの質問を受けて解説する質疑応答トークとなりました。

ここからは講師両名に加え、清水誠さんが登壇。清水さんは日本のデータ分析の第一人者と言っても過言ではないほどの存在で、国内では数少ないCAO(Chief Analytics Officer)として、いまは電通レイザーフィッシュなどで活躍されています。

小川さん、野口さん、清水さんの三賢人が揃い踏みということで、データ分析に関するどんな質問にも答えてくださるでしょう! ちなみに司会はMarkeZine編集長の押久保です。

スペシャルトーク
左から押久保、小川さん、清水さん、野口さん

Adobe AnalyticsからGoogleアナリティクスへ

最初に飛び出したのは、Adobe Analyticsを使っていたがGoogleアナリティクスへ移行することになったので、どういう点に注意すればよいか、という質問でした。

清水さんは、全然別物なので割りきって、違うものとして利用する、とあっさり回答。小川さん、野口さんも基本的には同じ考えで、数字の定義やデータの取り方が異なるので、割りきりが重要だということです。

どのデータを見ればいいのか分からない

次の質問は、どのデータを見ればいいのかわからないというもの。小川さんは一言目に「最初は広い視野でセグメントするのが大事」と答えました。まずは流入元などを見て、そこから細かいセグメントを見ていくのがいいそうです。

そして大事なことは、これは野口さんも強調されていましたが、改善施策、分析後のアクションをイメージすれば必要な分析軸(ディメンション)も見えてくるということ。「こういうユーザーにこうなってほしい」とイメージしておけば、どのデータを見ればいいのか、想像ができてくるのではないでしょうか。

清水さんも、ディメンションの向こうには人がいると捉えれば、グルーピングしやすくなり、どう分析すればいいのか分かるようになるとおっしゃっていました。

1日のセッション数が少ないサイトでのA/Bテスト

1日のセッション数が数百しかないサイトでは、A/Bテストをどう行なえばいいのか、という質問もありました。たしかに、判断材料となる数字が小さいと、それが本当に他方に比べて優れているのかは自信が持てません。

野口さんは、母数が少なくてもテストバリエーションの振り幅が大きければ構わないといいます。例えばバナーのA/Bテストを行ない、一方が3クリックで、他方が30クリックだった場合、クリック母数は少なかったとしても、Optimizelyのような統計エンジンを搭載したツールだと、しっかりとしたバリエーションごとの差が出ていれば統計的有意性を高く評価してくれる、とのことです。

清水さんは、コンバージョンの立て方を工夫すべしとのこと。購入数だけで測るのではなく、カートに入れた段階や、あるいはランディングページに1か月以内に戻ってきた率などでもテストは可能なのでそうです。

小川さんも、複数のチェックポイントを作ってその次のアクションと成果を見るのが重要だとの回答。ページを改善したのなら、そのページのセッション数だけでなく、そこから別のページに遷移したのかどうかを見る必要があるということですね。

また、小川さんが「明らかにやったほうがよいと思えることはA/Bテストをしなくてもいいのでは」と答えたことで、A/Bテスト必要派と不要派でバトルが勃発。野口さんはテスト必要派として、どんなときでもできるだけA/Bテストを実施することをお薦めするとのこと。ささいな変更でも大きく数値が下がることがあるという実経験から、A/Bテストをやっておきさえすれば、さまざまなリスクを回避できるとおっしゃいます。落としどころが難しいこの議論、清水さんが「改善してポテンシャルを高めることができるなら、テストをしたらいい。細かいところは必要ない」と答えてくださったことで、いい感じにまとまったのではないでしょうか。

進化するGoogleアナリティクス、まずは基本から

今回のセミナーではすでにGoogleアナリティクスを使っているという方が多く、これから使おうと考えている方もそれなりにいらっしゃいました。利用は早ければ早いほどいいのですが、焦らず基本を学ぶことが大切です。

達人に学ぶGoogleアナリティクス実践講座』はそうした方のためにある入門書ですので、これから導入を考えている方、まさに使い始めた方はぜひ手に取ってみてもらえればと思います。

よいデータ分析ライフを!

※MarkeZine参照





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