ネット広告の歴史を振り返る–「ダイナミックリターゲティング」誕生まで

2014年、インターネット広告におけるひとつのキーワードであった「リターゲティング」。その中でも「ダイナミックリターゲティング」というビッグデータ、アドテクノロジを利用した最先端の広告が、さまざまな企業のインターネットマーケティング活動において重要なポジションを築くまでに成長してきました。

新たなトレンドとなったダイナミックリターゲティング広告について、Criteoのアカウントストラテジストのメンバーが複数回にわたって解説していきます。

第1回は、まずインターネット広告の歴史を「ターゲティング」の切り口で振り返り、ダイナミックリターゲティングが誕生した背景に迫ります。

「ターゲティング」視点で振り返るインターネット広告の歴史

インターネット広告の歴史はさまざまな角度から語られるものの、その発展過程を辿る上では「ターゲティング」という側面は外せません。

ターゲティングは、インターネット広告に限らずすべての広告において重要な要素です。たとえば「週刊誌Aは、発行部数30万部、読者の平均年齢が38.6歳、職業は会社員が55%、役職は部長クラスが13%、課長クラス18%、平均年収は485万円」といった形で各メディアはユーザーデモグラフィックを公表しています。広告主は、これら読者データを参考に、訴求したい商品・サービスとマッチングするユーザーを擁するメディアを選定していきます。

インターネット広告においても同様で、黎明期である2000年代前半までは、メディアから提供されるユーザーデモグラフィックがターゲティングの主な材料でした。

当時のインターネット広告におけるターゲティングの別の手法もひとつご紹介します。(図1)は、2001年当時のYahoo! JAPANのトップページで、現在のデザイン(図2)と比較してみると大きな違いがあることがわかります。当時は検索窓が小さく、「プロパティ」(黄色の枠線部分)と呼ばれる目次機能から目的のサイトを探すというユーザー行動もまだ一般的でした。

  • (図1)2001年当時のYahoo! JAPANのトップページ

  • (図2)現在のトップページ

そのため、カーナビを取り扱っている企業であれば「趣味とスポーツ>車>カーナビ」のページに広告を出稿することで、高い興味関心を持つユーザーにリーチすることが可能でした。自動車専門誌に広告出稿することと近しいターゲティング。インターネット以外の広告において、長年積み上げてきたターゲティング手法を踏襲していた時代です。

そこに2002年、革命が起きます。リスティング広告(検索連動型広告)の誕生です。2002年9月にGoogleが、11月にOverture(現Yahoo!リスティング)が日本でサービスを開始します。

ユーザーの性別、年齢、年収、趣味趣向といった統計データに頼ることなく、ユーザーが“今まさに”“自らの意思で”探している興味関心のあるキーワード、その検索結果に広告を配信することが可能になりました。東京出張の予定があるユーザーが「東京 ホテル」と検索をしたまさにそのページに関連性のあるサイトが表示されるのですから、効果がよいことは歴然です。

  • (図3-1)Googleのリスティング広告配信イメージ

  • (図3-2)Yahoo! JAPANのリスティング広告配信イメージ

リスティング広告は瞬く間にインターネット広告市場を席巻し、サービス開始から5年後の2007年にはすでに30%に迫る市場シェアを占め、その後も順調に市場規模を伸ばしました。2011年には、そのシェアはインターネット広告の40%を超え、2500億円(PC、モバイルを含む)を超える規模に成長しました。


国内インターネット広告市場(媒体費のみ)の推移と予測(出典:電通「日本の広告費」、みずほ銀行産業調査部)

リスティング広告はまた、新たな広告の種類を生み出しました。一般的に「運用型広告」と呼ばれる広告です。従来の広告は、配信される「枠」だったり、期間、配信するインプレッション量があらかじめ決まっており、広告掲載中に広告原稿やデザインといったクリエイティブを変更することは多くありませんでした。

リスティング広告には基本的に「枠」という物理的な制約がなく、入札単価のオークション(厳密には、入札単価だけではなく複雑な要素が加わります)により表示箇所、「枠」が決まります。入札単価を「運用」することが、よりよい「枠」に広告掲載するための重要な役割となります。加えて、管理するキーワードが数千、数万となることも珍しくなく、入札単価調整、クリエイティブのテスト、効果検証といった「運用」を日々行うことが、効果をより改善していくための必須条件となっていきます。

少々蛇足となりますが、リスティング広告誕生以前にも、検索結果に広告掲載をする商品は存在していました。しかしながら、「『自動車』のみの検索結果」、「『転職』のみの検索結果」といった限られたキーワードのみが販売されており、現在のリスティング広告のように数千、数万キーワードに対して掲載できるものではありませんでした。

販売するメディアにとっても、キーワード単位でひとつずつ掲載枠を設ける必要があり、かつ広告単価も決して高くありません。このような事情から、メディアにとって、注力すべき広告商品ではありませんでした。広告主側からみると、広告効果は高いためニーズはあるものの、配信量が少なくスケール面でインパクトがないため、メディア同様、マーケティング活動における重要なポジションを築くまでには至りませんでした。

ニーズはあるもののマネタイズ面でくすぶっていた「検索結果」という金の卵が、Overture、Googleが起こしたインターネット広告における革命によって、どのような結果になったかは、その後のGoogleの売り上げを見れば明らかです。


(図5)Googleの売上推移(参考:Google IRデータ)

閑話休題。2000年代中盤にはインターネット広告の中心となったリスティング広告ですが、広告主/メディア両サイドからみると問題も生じてきます。皆さん、ネット閲覧時の行動を思い浮かべてみてください。

「デジカメを買い換えたい」場合、比較サイトやECサイトを閲覧するのは、価格や在庫、性能を調べるのが目的です。「検索」はそのサイトにたどり着くための手段にすぎず、ユーザーは「検索」に多くの時間を費やさないのです。

広告主のネット経由での売り上げが日に日に増し、ネットの影響力が強くなるなか、インターネットマーケティング施策がリスティング広告偏重では十分ではなくなってきます。そこでユーザーが長く滞在し、かつ多く閲覧するページに再び注目が集まるようになります。

このエリアは純広告と呼ばれる一般的なバナー広告、コンテンツマッチなどと呼ばれるサイトページのコンテンツに連動した広告が掲載されていたものです。このエリア、特に純広告に関しては、インターネット広告市場が年々大きくなるなか、2008年の売り上げをピークに踊り場を迎えます。

インターネット広告は、多くの広告主から“ダイレクト”レスポンスを求められます。広告掲載中にどれだけの目に見える成果が上がったかが重要な指標となります。広告主にとって満足な結果が得られれば、それこそリスティング広告が辿ったとおり、売り上げは順調に伸びていきます。

純広告が初めて前年比でマイナスを記録した2009年、すでに米国において普及が進み始めていた新たなアドネットワークの潮流が、日本でも生じます。

もともとアドネットワークは、各サイトの売れ残りの広告枠や閲覧者の少ないサイトを束ねてボリュームを出すものであり、品質や効果の側面でいくつかの問題を内包していました。そこに、広告配信面でのターゲティング(たとえば旅行関連のサイト/コンテンツに広告配信をする)ではなく、どのようなサイトを見てどのような商品を買ったユーザーなのかといった「オーディエンスデータ」からターゲティングを行う「オーディエンスターゲティング」という新たなトレンドが生まれました。

オーディエンスデータが活用されることによって、広告主は欲しいユーザーを指定し、媒体社はどのようなユーザーなのかを提供、さらにそれぞれ買値と売値を指定するという新しいマーケットが誕生。さらに、この買値と売値の取引をリアルタイムに成立させる株式市場のような仕組みとして「RTB(=リアルタイムビッディング)」が誕生します。これが、俗に言う「アドテク」が産声を上げた瞬間です。

株式市場といいましたが、アドテク誕生の背景としてよく語られるのがリーマンショックとの関係です。2008年暮れに起きたリーマンショックによって職を失った金融工学エンジニアが広告業界に流れ、株式市場で適用されていたオークションシステムを広告においても実現したといわれています。

2010年代に入ると、テクノロジの進化が加速します。広告主側が、市場であるRTBにおいて、オーディエンスターゲティングを取り引きするための仕組みである「DSP(=Demand Side Platform)」、媒体側の仕組みとして「SSP(=Supply Side Platform)」、さらにユーザーの行動データや属性データといったオーディエンスデータを管理する「DMP(Data Management Platform)」など、アドテクを中心にした新たなビジネスが勃興し、多くのベンチャー企業が誕生します。これらの詳細な説明については、これだけで数週費やすボリュームになってしまうため、本稿では割愛します。

ここでの大きなターニングポイントは、従来、主に純広告で使用され、踊り場を迎えていたディスプレイ広告がアドテクを取り込み、オーディエンスターゲティングを活用することで、高付加価値の商品として生まれ変わったことです。

アドテクを利用したディスプレイ広告は、枠売りや期間売りの商品ではなくリスティング広告同様「運用」することが必要な商品となりました。2011年よりインターネット白書においても、「運用型広告」「枠売り広告などその他広告」という2つに大分類される(前述、図4)こととなります。

リスティング広告に加えて、前述したように高付加価値を得たディスプレイ広告により、広告主にとっては、より多くのユーザーを自社サイトに訪問させることが可能になりました。しかしながら欲求は尽きないもので、次の課題として浮かび上がってきたのが、訪問したものの離脱してしまったユーザーへのアプローチです。

皆さんはネット上で商品を買う際、1度の訪問で購入まで至るケースは稀なのではないでしょうか。一般的に100人が自社サイトに訪問して、購入まで至るケースは2~3%(ただし業種などにより大きく異なります)といわれています。つまり90人以上の人はせっかく訪問してくれたのに何も買わずに離脱してしまうのです。

この部分に特化したターゲティングとして生まれたのが「リターゲティング広告」です。さらに、サイト訪問者に対して単純にバナー広告を掲載して再来訪を促すだけでなく、折しもアドテクの登場により積極的に自社データを活用するようになった時代、離脱したユーザーがどのような商品を閲覧したかという情報を付加した上でリターゲティングを行う「ダイナミックリターゲティング」の潮流が生じます。

いうなれば、楽天やアマゾンを訪れた際、過去の購買/閲覧履歴を元にした、自分にあったレコメンド商品が表示されると思いますが、これと同じような仕組みをユーザーが滞在しているコンテンツにおいて実現するものです。

  • (図6)バナー広告の例

離脱したユーザーをただサイトに戻すのではなく、閲覧していた商品ページへ誘導する。または、ここが各ダイナミックリターゲティングサービスを提供する各社の秘伝の味付け部分ですが、膨大なビッグデータを解析し、ユーザーが閲覧していなかったとしても興味関心があると予想される商品をバナー上に表示し、そのページへ誘導するといったことも実現可能になりました。

Criteoが日本でサービスを開始してから約3年。日本のインターネットユーザーの89%が1カ月に1回以上、Criteoが生成・配信している広告を目にするまでに「ダイナミックリターゲティング」広告は急成長しています。そして、広告主によってはリスティング広告と双璧をなすまでの重要なインターネットマーケティング施策とまでいわれるまでになってきています。

※CNET Japan Marketers参照





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