PVやUUは無視せよ!アクセス解析の最新手法とは?

アクセス解析のノウハウはWebマスターの「秘伝」。他の部署にも、ひょっとすると先輩後輩間でも教えあわないこともあるだろう。だからこそ、最前線にいるWebマスターの手法はなかなか伝わってこない。そんな中、Web制作会社のロフトワークが開催したアクセス解析研究会は、Z会、オムロンヘルスケア、大阪ガス、NIMS、ヤマトシステム開発、エースホーム、ネクスウェイなどが参加し、参加者以外に非公開の条件で実データに基づく検討や討論が積み重ねられたという。

研究会の講師役は、楽天でアクセス解析を担当していた清水誠氏。Webビジネス歴17年目の清水氏は、制作ディレクションからプロデュースまで、IA、PM、CMS、SEO、CRMなどを実務で活かしてきたことで知られ、アクセス解析の第一人者としても有名だ。研究会の内容を「Webマスターが本当に聞きたいアクセス解析の疑問」として、清水氏とロフトワークの君塚美香氏に聞いた。

アクセス解析の目的は効果測定ではない

君塚:アクセス解析研究会の参加者からは「研究会の内容を活かしたら成果が上がってきた!」という声が届いています。各社でWebマスターとして活躍している皆さんなのに、清水さんのアクセス解析のノウハウを導入することでまだまだ改善できる、というのがWebの面白さですよね。

清水:研究会で私が一貫して説明したのは、「アクセス解析は効果を測定するのではなく、ユーザーを理解するために実施すること」でした。アクセス解析では「効果測定」が目的にされがちで、「アクセス解析ではWebサイトで実施した施策の効果を検証する」と理解している人が多いように思います。しかし、そんなに結果が知りたいのなら、資料請求の数や注文数を見れば済む話です。重要なのは、ある結果の原因は何かを知り、今後の改善に活かすことです。そのために、アクセス解析によってユーザーのニーズや利用状況を理解するのです。

君塚:ユーザーを理解するのがアクセス解析の目的だとしても、利用状況はアンケート形式で回答してもらったり、ユーザーの操作を目の前で見て問題の有無などを確認したりする手法もあります。アクセス解析の特徴は何でしょうか?

清水:ユーザーを理解するのがアクセス解析の目的だとしても、他の調査手法を置き換えられるものではありません。アクセス解析の最大のメリットは、定常的、定量的に、つまり期間を定めたりサンプルを抽出したりせずに、Webサイト全体を指標によって理解できることです。ユーザーの行動が指標になるので、定型レポートを毎日出力して確認できますし、ある閾値を超えたらアラートメールを送信するような自動化も簡単です。もちろん指標を眺めているだけでは何もわかりません。変化を察知したら、その場でA/Bテストやいろいろな調査手法を併用しながら深掘りして分析すればいいのです

PVやUUは無視しよう

君塚:そうすると、多くのWebマスターが持っているであろう「アクセス解析の指標を見ても、何を改善すべきかわからない」という疑問は、清水さんのおっしゃるアクセス解析の目的から逸れていることになりますね。

清水:そのとおりです。アクセスを解析して得られる指標を眺めても、有益なヒントはほとんど得られません。その前に「知るべきこと」を知る必要があるのです。

君塚:ツールを導入してPVやUUといった指標を見ていてはダメということですか? ほとんどの企業はアクセス解析ツールのレポートに表示される指標に基づいて改善策を考えているはずで、かなり衝撃的な話だと思うのですが。(^_^;)

清水:サイト全体のPVやUUは無視した方がかえってメリットがありますよ。たとえば、企業主催のセミナー会場で実施するアンケートだったら、「参加者の所属はこんな部署だろうな」とか「事前にもらった資料を読むとこんな感想を持つだろうな」といった仮説を立てて、実際にどうだったかを検証するために設問を考えるはずです。アクセス解析も同じで、最初に仮説が必要です。仮説を立てた上で、

  1. その仮説は検証が必要なのか?
  2. 何をどう知るとその仮説を検証できるのか?
  3. そのために、アクセス解析をどう活用できるのか?
  4. それはカスタマイズが必要なのか?

と考えを進めていけば、それがアクセス解析の要件(仕様)になります。仕様はビジネスモデルや企業によって異なるので、ツールを導入しただけで得られるレポートや指標はあまり役に立たないのです。

君塚:なるほど。Webサイト全体のPVやUUは何かの要件に基づく指標ではないので、そこから改善策が見つかるはずがない。「ユーザーが欲しいのはどんな情報か?」、「ユーザーはどのようにサイトを回遊するのか?」といったことに仮説を立て、仮説と現実とのギャップを検証することで、ユーザーの欲しい情報が実際は何で、どのようにサイトを回遊するかわかるのですね。

清水:はい、逆なのです。アクセス解析のいろいろな指標から何かを知るのではなく、まず「知るべきこと」を明確にし、「知るべきこと」を知るための数字が取れるようにアクセス解析ツールのレポートをカスタマイズしたり、WebサイトのHTMLやJavaScriptを改修したりするのです。

成果の出るアクセス解析のステップ

君塚: Webマスターがすべきことがだんだんわかってきました。清水さんのようにWebサイトを分析して成果を出すにはどうしたらいいでしょうか?

清水:まずは「知るべきこと」を知る必要があります。「知るべきこと」は、そもそもWebサイトを何のために開設しているのかの戦略に立ち返ることで見えてきます。抽象的な「戦略」だと具体的な測定やレポーティング、改善アクションに落とし込めなくなりますので、Webサイトの機能や蓄積してきたコンテンツを洗い出して、それがなぜ存在しているかを考えるところから始めるのがいいでしょう。

君塚:「戦略」というと難しそうですが、Webサイトの既存の機能やコンテンツの洗い出しなら、Webマスターは得意でしょうね。

清水:具体を抽象化したり、結果から原因にさかのぼったりするのは、スムーズに考えをまとめるときのコツだと思います。すでにサイトに備わっている機能やコンテンツは、誰がどのような時に使うことを想定して用意したのか? ユーザーが使ったり読んだりして、その後何をすれば企業にとって成功といえるのか? Webサイトの「全体」ではなく、機能、コンテンツという「部品」の効果から考え始めることで、Webサイト全体の戦略や効果が、抽象的にではなく、具体性を保ったまま見えてくるはずです。逆にいえば、「部品」から考え始めても全体の戦略や効果が見えてこないWebサイトは重大な欠陥を抱えているといっていいでしょう。

アクセス解析に欠かせない「クリエイティブ思考」

君塚:Webマスターは、特にアクセス解析についてどんなスキルを持っているべきなんでしょうか?

清水:アクセス解析の可能性や重要性は、必ずしも多くの企業で認知されているとはいえません。つまりWebマスターには、アクセス解析の必要性を、成果を出しながら浸透させることが求められているのが現実です。したがってアクセス解析に秀でているのはもちろん、WebマーケティングやUIデザイン、コンテンツ編集、制作技術まで幅広い知識が必要でしょう。アクセス解析はまだ発展途上の分野なので、試行錯誤や手戻りが多く発生します。それぞれの担当に確認しながら調整すると費用や時間がかかって思うように前進できません。自分自身で総合的に判断できる能力と環境が揃っていると有利ですね。

君塚:Webに関することをほとんど全部知っている必要があるというのは、かなり大変ですね。

清水:すべてを深く知っている必要はありません。強い分野がひとつあれば、他は浅くても問題ありません。必須スキルをどうしてもひとつに絞り込むなら、クリエイティブな思考能力です。知るべきことはどうすれば計測できるのか? 理想と現実、ユーザー視点と企業視点、経営視点と現場視点といったバランスを取り、「裏ワザ」も駆使しながら、実行可能な答えを見つける必要があります。

関係者との調整には「図」を使え

君塚:Webマスターの能力がどんなに高くても、企業のWebサイトを運営するには多くの関係者との調整が必要ですよね。しかも関係者が多いほどWebリテラシーの違いが大きくなります。Webサイトの戦略や知るべきことがわかったとしても、どうすれば関係者で戦略を共有できるのか、その手法に困っているWebマスターも多いのではないでしょうか。

清水:「関係者を集めたワークショップ」は有効な手法だと思います。一方的に説明したり、議論したりするのではなく、Webサイトの目的やユーザー、機能、コンテンツといった部品が全体像でどう位置づけられるかを関係者それぞれで図にするのです。言葉では対立的でも図にするとほとんど同じだったり、同じ言葉を別の意味で使っていたりすることが図にすると明解になります。位置や大きさ、色、形、矢印の向きといった各関係者の理解を図にし、それぞれの理解に違いがあることをお互いに確認し、違うことを前提に議論することで共通の理解に近づけます

コーポレートサイトにKPIは設定できるか?

君塚:資料請求やECサイトであれば目的ははっきりしていますし、見込み客やお客様というユーザーも明確です。ショッピングカートのような機能、商品説明のようなコンテンツもはっきりしていて、コンバージョンは資料請求数、販売数で明解です。また、コンバージョンに至るプロセスをKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として評価するにしても、ランディングページや商品キーワードでの訪問数のように簡単に指標化できます。では、コーポレートサイトはどうなんでしょうか。Webマスターが戦略を考えたり関係者で図を作ったりするにしても、コーポレートサイトのようにコンバージョンが明確でないサイトの場合はどうすればいいのかわかりません。

清水:資料請求数や販売数だけがコンバージョンやKPIではありません。コーポレートサイトには企業のメッセージを社会に伝えるという存在意義があってコンテンツを整備するわけですから、企業のメッセージが社会にどれだけ届いたかを指標として知るにはどうしたらいいのかを考えるのです。

たとえば、幅広くサービスを提供している企業が認知を高めたい目的でコーポレートサイトを運営しているなら「ひとりひとりの訪問者が1年間に閲覧するサービスカテゴリ数の平均」をKPIにすればいいでしょう。100のカテゴリーそれぞれにページがあって、PVやUUといった指標ではまんべんなくアクセスされているように見えても、ひとりひとりのユーザーは平均で年間1.2のカテゴリーのページしか見ていなかったとしたら、その企業がサービスを幅広く提供していることはユーザーに伝わっていません。そういうギャップを見つけて「関連サービスへの誘導」を目的のひとつとして設定し、そのために関連リンクの設置や訪問時のキーワードでWebページの見た目を変えたりする施策があり、その結果、KPIが上がったり下がったりすることで、施策を定量的に評価できるようになります。

「コンバージョンがない」といわれるコーポレートサイトであっても、何をしたいかの「コンセプト」(想い)を洗い出すことで、KPIを設定できます。IR情報に力を入れているのであれば、投資家にもっと投資してほしい、などの理由があるはずです。投資を決断するために、どんな情報が必要とされているのか? サイト上でユーザーがどう行動した場合に「効果があった」(=投資が増えそう)と判断できるのか? 重要なのは、サイトのゴールを達成するための施策を数値的に評価できるようにすることです。

コンテンツの整理や関係者の調整に使える新手法

君塚:非公開で始めたアクセス解析研究会ですが、8月4日にはその内容を徹底公開するセミナーを開催します。講師となる清水さんはどんなお話を予定していますか?

清水:アクセス解析研究会では、サイトの戦略を「コンセプトダイアグラム」として図にし、そこからKPIを設定したり、設定したKPIをアクセス解析の手法で取り出したりする手法をお話しするつもりです。「やってみよう」と思えたらすぐに実践できるように、理論から手法までなるべく具体的にお話したいです。

君塚:「コンセプトダイアグラム」は名前が難しそうですが、研究会の皆さんは楽しそうに作っていましたよね。図を作る、という目的でふだんはぎこちない上司と部下の会話がはずみますし、Web戦略を話し合ったり、コンテンツを整理したりすることにも利用できます。A4の紙1枚でサイトを説明できるので関係者との調整も簡単になります。まだ席に少し余裕がありますので、Web Professionalをご覧の皆さんもぜひ参加してください!

※ASCII.jp×WEBPROFESSIONAL参照





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